インフルエンサーが信者をお金に変える錬金術

ネクストムーブモバイル。 信者からお金を搾取するイメージ。
目次

〜〇〇モバイルの裏側に潜む残酷な真実〜

正直言って、信者ビジネス(オンラインサロン系)をやっている人は、MVNO(格安SIM)で安易な小銭稼ぎなんてやめておけと言いたい。

俺は独自プランのパイオニア的な法人携帯の販売に15年関わってきた。だからこそ、通信業界のインセンティブ形態と、それに振り回されるユーザー心理については嫌というほど見てきたし、詳しい自負がある。

最近、インフルエンサーが自身の名前やIP名を冠した「〇〇モバイル」といった独自プランを展開するケースが散見される。確かに、ある程度のコミュニティーを保有していて、それが信者的な傾向が強い場合、ちょっとした小遣い稼ぎにはなるだろう。

だが、実は相対的に見てマイナス効果の方がでかい。

今回は、この「錬金術」の裏側と、それがなぜ結果的に自分の首を絞めることになるのかを解説しようと思う。

ターゲットは「なんちゃって意識高い系」

そもそも、この手の〇〇モバイルをホイホイ契約するセグメントはどんな層か。

一言で言えば、「なんちゃって意識高い系」だ。

自分で考える力はないけれど、なんとなく影響力の強い人のそばにいれば何か起きるんじゃないかと淡い期待を寄せている人たちである。

しかし、彼らも決して馬鹿ではない。
スマホの月額料金というものに疎かったとしても、毎日のようにテレビやネットの激安プランの広告に晒されている。さすがに、表向きは豪華な付加価値がついていても、それが単なる「名前だけを貸した代理販売」であることくらい、かなり情弱な人でも気づくわけだ。

蓄積していく「搾取されている」という澱(おり)

インセンティブの存在に薄々気づいていたとしても、ファンは、しょーもない付加価値で繋ぎ止められている現実を認識せざるを得ない。

サービス提供側、つまりインフルエンサーは、「管理コストをかけずにキャリアに丸投げできるから旨みしかない」と思っているかもしれない。だが、現実は甘くない。

毎月毎月、決して安くはないスマホの月額料金を払うたびに、「自分は搾取されているのでは?」という気持ちが、澱のように積み重なっていくのだ。
それが、日々使っているスマホというインフラの恐ろしいところである。

圧倒的なカリスマ性があって、数万回線単位での契約が確保できるなら話は別だ。
M澤さんのように、信者ビジネスのプロで、しかもその規模で回せるトップ層は例外である。だが、本当にそのレベルの人は、そもそもMVNOで小遣い稼ぎなんてしない。

解約が引き起こす「本丸」へのダメージ

仮に数百回線を契約させたとしても、間違いなく一定の確率で解約は入っていく。
ここからが本当の地獄だ。

「〇〇モバイルを解約した」という行為は、ファンにとって「自分の信者としてのステージが下がった」ような感覚を伴いやすい。

そうなるとどうなるか。

結局のところ、本丸であるコミュニティー、つまりオンラインサロンやファンクラブなどの満足度が下がるのである。

これは結局、信者に「投げっぱなしジャーマン」のごとく高額な情報商材を売りつけるのと、構造的には大して変わらない。どんなに豪華な付加価値を取り繕ったところで、本質はそこにある。

そして、より安いサービスが世の中に浸透するタイミングで、そっくりそのまま乗り換えを選択し、潜在的な満足度はさらに下がる。

なぜこの「錬金術」が横行するのか?

理由は単純極まりない。
サービス提供元のMVNO事業者が、大して儲かっていないからだ。

スマホは既にほとんどの人に行き渡っていて、市場は完全にリプレース前提になっている。つまり、モバイルナンバーポータビリティー(MNP)での回線の奪い合いである。

しかも、独自の通信網を持たないMVNOは、基本的に薄利多売のビジネスモデルだ。自社での新規顧客獲得コスト(CPA)の高騰にも苦しんでいる。

自社で売れないからこそ、必死で著名人やインフルエンサーにアプローチをかけにいく。

「インフルエンサー側にはほぼデメリットがありません」
「ユーザーが使い続ける限り、チャリンチャリンとストック収益が入ってきますよ」

そんな甘い言葉で営業をかけるわけだ。

これを聞いた、信者を金に変換する錬金術を日々研究しているインフルエンサーたちは、こぞって飛びつく。
しかし、彼らは余程優れたマーケターでない限り、ユーザーの深い心理までは理解していない。

だからこそ、これが「結果的に本丸を先細りさせる罠」だと気づかないのである。

結論:目先の金に困っていないなら手を出すな

仮に数百回線を保有したところで、単発のショットインセンティブは抜きにして、継続的なARPU連動インセンティブなど、せいぜい数万円から十数万円程度のハナクソみたいなものだ。

目先のお金に困って、明日のご飯も食べられないという状況でもない限り、この錬金術には手を出さない方がいいと俺は思う。

そして、使う側のユーザーにも一言言っておきたい。

インセンティブ体系を明らかにせず、ユーザーにとってメリットかデメリットかもはっきりわからないような、とってつけた付加価値をうたうサービスを使っている時点で、あなたは「盲目的な信者」か「ただの情弱」確定である。
それを自認している人以外は、手を出さないのが得策だ。

キンコン西野さんのチムニーモバイルについて

この記事を書こうと思ったのは、チムニーモバイルのローンチを知ったからだ。

俺はこれを知って、さすがだなと思った。
これまで書いてきたことを、西野さんはしっかり認識しているからだ。

彼は、「信者を使って販売奨励金(インセンティブ)によるせこい小遣い稼ぎをするのはどうなのか?」ということについて、しっかり腹落ちするまで考えた結果、「それは違う」と判断している。

つまり彼は、信者ビジネスと揶揄されることはあっても、曇りなき眼でサロンメンバーと誠実に向き合っていることがわかる。

ここは、さすがトップレベルの芸人という立場から軸足をIP創造に移して、再び成功を収めただけのことはあると素直に思った。

そして、結果的にサービス契約のインセンティブを自分の懐に入れるのではなく、ユーザーに還元する、つまりサービス価格を下げるという選択をした。

これは、数十年先まで見越してサロンメンバー一丸となってIPを盛り上げていく上で、最善の選択だと言っていいと思う。

ここは、そのへんに転がっている「信者をお金に変える錬金術」とは明らかに一線を画している。
これは素直に素晴らしい。

ただし、ここにも落とし穴はある

ただし、これには実は落とし穴がある。
これはコミュニティーを孤立させる可能性のある劇薬でもあるからだ。

ここで言いたいのは、チムニーモバイルの考え方がダメだという話ではない。
むしろ逆で、普通の〇〇モバイルより遥かに筋がいいし、誠実だと思う。

問題は、その誠実さをもってしても、〇〇モバイルという形式そのものが抱える副作用までは完全には消せないという点にある。もっと言えばインフラ系の代理店販売全般に言える。

なぜか。

販売奨励金を自分の懐に入れず、価格に転嫁する。
これは一見するととても正しい。
だが、その瞬間に起きるのが、一物多価の問題である。

要するに、同じような回線なのに、コミュニティー経由の独自プランだけが安く見える状態が生まれるわけだ。

すると何が起きるか。

そのサービスを使っていない外部の人間、とくに元のブランド側(MVO)のユーザーから見れば、
「なんであのコミュニティーだけ得しているんだ」
「結局、身内だけ特別扱いじゃないか」
という感情が生まれやすい。

ここで重要なのは、善意でやっているかどうかではない。
どう見えるかである。

西野さん本人にせこい小遣い稼ぎの発想がなくても、外からは「信者向けの特別価格」「身内優遇の仕組み」に見えてしまう可能性がある。
そして一度そう見えた瞬間、コミュニティーの外側にいる人たちの不満や嫌悪感は、サービスそのものではなく、コミュニティー全体に向かい始める。

つまり、ここで起きるのは単なる価格差への反応ではない。
コミュニティーそのものが、外部から疎まれやすくなるという問題だ。

アンチを増やし、コミュニティーを孤立させる危険

これが厄介なのは、その空気の悪化がじわじわ効いてくるところだ。

最初は「ユーザー還元で良いことをしている」と見える。
だが、時間が経つにつれて、外側からは
「あの人たちは特別扱いされている」
「あのコミュニティーは閉じている」
「あそこは信者価格で回っている」
という印象が積み上がっていく。

そうなると、チムニーモバイルの利用者そのものが、外から見て面倒くさい集団のように映りやすくなる。
そしてその空気は、結果としてコミュニティー全体を孤立させる

本来、IPを大きくしていくには、内側の熱量だけでなく、外側から見た開放感や参加しやすさも重要になる
だが、通信サービスのような毎月使うインフラにコミュニティー色が強く乗ると、そのサービスが「所属証明」のような意味を帯びてしまう。

するとどうなるか。

少しでも不満が出た時に、ただの通信サービスへの不満で終わらない。
料金でもいい。特典でもいい。サポートでもいい。何でもいい。
普通のMVNOなら「このサービス微妙だったな」で終わる話が、〇〇モバイルだと
「やっぱり信者ビジネスっぽい」
「結局、囲い込みだった」
という評価に変わりやすい。

そして、その感情は〇〇モバイルだけで終わらない。
その背後にある本丸、つまりサロンやファンクラブ、IPそのものに逆流していく。

ここが本当に怖いところだ。

満足度の低下は、本丸に返ってくる

〇〇モバイルの利用満足度が落ちる。
その時、ユーザーの頭の中では、サービスとコミュニティーが完全に切り分けられていないことが多い。
と俺は思う。

だから、
「あのサービス、思ったほどじゃなかった」
という感想は、
「このコミュニティー、なんか閉じてるな」
「このIP、思ったよりも打算的だな」
という印象に変換されていく。

要するに、誠実にユーザー還元したつもりでも、構造としては
アンチを増やし、コミュニティーを孤立させ、〇〇モバイルの満足度を下げ、その不満が最後に本丸に返ってくる
という流れが起こり得るのである。

そしてこれは、机上の空論ではない。

俺は独自プランのパイオニア的な法人携帯の販売に15年関わってきた。
日本で最初に法人向けの独自プランを販売した時には、実際に世間からかなりのバッシングを受けた。

だからこれは、「そういうこともあるかもしれない」という想像ではない。
独自プランというものは、設計者が思っている以上に、外部の感情を刺激しやすい。
そして、その空気はサービス単体では終わらず、必ず本体側にまで影響してくる。

だからこそ、軽い気持ちで手を出すな

結論として言いたいのはこういうことだ。

普通のインフルエンサーがやっている〇〇モバイルの大半は、やはり「信者をお金に変える錬金術」でしかない。
そこに未来はない。むしろ、自分の本丸のオンラインサロンやIPを傷つけるだけだ。

一方で、チムニーモバイルはその限りではない。
そこはちゃんと評価すべきだ。
インセンティブを自分の懐に入れず、ユーザーに返すという判断は、そこらの〇〇モバイルとは明確に違う。

だが、それほど誠実に設計してもなお、〇〇モバイルという形式が持つ副作用まではゼロにはできない。
だからこそ、これは軽い気持ちで手を出していいビジネスではないのである。

善意でやっても劇薬。
ならば、打算だけでやる〇〇モバイルがどうなるかは言うまでもない。

信者をお金に変える錬金術は、うまくやれば一時的に金になるかもしれない。
だが、下手をすれば、信頼を溶かして金に変えるだけだ。

そして、いちばん高くつくのは、たいてい後者である。

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