あれは、僕が小学校3年生の時のことだ。
僕は、同じクラスの女子(Yちゃん)と一緒に、楽しく会話をしながら下校していた。
Yちゃん「ねぇ、たむぞうくん、今日が何の日か知ってる?」
僕「知らないけど・・・なに?」
Yちゃん「えぇ?!バレンタインデーだよぉ。知らないのぉ?」
僕「あぁ・・・」(当時は全然興味なかった)
Yちゃん「私、好きな人が居るからその人にチョコあげるの」
僕「へぇ。家に帰ってから、また渡しに行くの?」
Yちゃん「そうだよ。もうチョコ作ってあるの。誰だか知りたい?」
僕「うん」(本当は全然興味ない)
Yちゃん「じゃあ!誰だか当ててみて!」(めっちゃ嬉しそうに)
僕「K君でしょ」(クラスで一番の人気。ドッチボールでエース)
Yちゃん「ちがーう!」(めっちゃ嬉しそうに)
僕「・・・S君だ」(クラスで一番の秀才。算数の計算が速い)
Yちゃん「せんぜんちがーう!」(めっちゃ嬉しそうに)
可能性の高そうな順に名前を言っていくが、結果はすべて不正解。僕はめちゃくちゃ悩んだ。
ランドセルの中に入っていた連絡網を取り出して、道路に座り込み、クラスの男子の名前を片っ端から読み上げた。
しかし結果は・・・
Yちゃん「ぜんぶちが~う♪」(めちゃくちゃ嬉しそうに)
不正解なのに、なぜかとても嬉しそうな顔をするYちゃんを見て、バレンタインデーというのは、女の子をおかしくするのではないかと本気で怯えた。
僕「ちっともわかんないよ!もうかえる!じゃあね!」(不機嫌に)
そう言って、僕はそそくさと帰った。一人で帰る途中でも考えてみたが、どうしてもわからなかった。
しかし、家に着くと、そんなこともすっかり忘れてしまい、おやつを頬張りながら大好きなレゴブロックに夢中になっていると・・・
ピンポーン♪
家のチャイムが鳴った。僕が母親に呼ばれて玄関に行くと・・・
そこにはYちゃんが恥ずかしそうな笑顔を浮かべながら立っていた。手には可愛いリボンの付いた小さな箱を持っていた。
あのときの事は今でも鮮明に覚えている。
(実話です)