チートデイズ ~UFOめんこで天下を取り損ねた男~

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人は誰しも幼い頃のある時期において、誇らしく輝かしい日々というものを幾度か経験するのではないだろうか。

それは長い人生からすれば、ごくわずかな期間でしかないが、脳裏に鮮明に焼き付いて離れない。

その期間は「なろう系小説」のように、全ての事象が自分に都合よく働く。

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陰キャでニートのクズ男がひょんなことから異世界へ転生したら、初っ端からチート級のステータスで、超ご機嫌だぜ!

おてんば、ロリ、お色気、メガネっ子などのテンプレヒロインたちによるハーレム状態で、これまた超ご機嫌だぜ!

おっと!足がすべって巨乳に顔を埋めるアクシデント発生!

みたいな・・・

まるで、世界の理を乱すことを許されたかのような特別な日々。幼くして背徳感さえ抱くが、決して抗うことなどできない。

俺はそれを「チートデイズ」と呼んでいる。

絶滅?古の遊び「めんこ」

俺にチートデイズが訪れたのは、小学校三年生の時だ。当時夢中になっていたある遊びに関する突飛なアイデアを思いついたのがことの始まりだった。

当時は携帯ゲーム機の走りであるゲームウォッチが任天堂から発売され、人気を博していたが、まだファミリーコンピューターは世に出ておらず、子供たちの大半は屋外で遊ぶのが当たり前の時代だ。

俺が住んでいた千葉の片田舎でも、言わずもがな殆どの子供たちは屋外で遊んでいた。そして、その頃に大流行していたのが、今では絶滅したといっても過言ではない、古の遊び「めんこ」だ。

平成、令和世代のために簡単に説明しておくと、「めんこ」とは、円形や長方形の厚紙にイラストが印刷された玩具で、それを対戦相手と交互に地面に叩きつけ、相手のめんこを裏返すと勝ちという単純明快な遊びである。

めんこの最大の特徴は、何と言っても勝負に勝つと相手からめんこを奪い取ることができる点だ。めんこが裏返った瞬間に所有権が相手に移ってしまうので、友達同士でもしばしばもめ事が起こる。

なけなしの小遣いで買ったお気に入りのめんこが一瞬で奪われ、泣き出してしまう子も結構いた。

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現代の感覚からすると、めんこを奪われた子供が可哀想だと感じる人もきっと居るだろう。

確かに現代の過保護社会で育った子供がめんこで遊んだとしたら、モンスターペアレンツ同士の場外乱闘に発展する可能性も大いにあるだろう。しかし、当時は親を巻き込むほどの大きな問題になることはほぼ無かった。

なぜなら、昔の子供の地域コミュニティは縦割り社会に似た構造だったので、時として理不尽な事(ルール)も受け入れなければならないことを、子供たちは日々の遊びから学び取っていたからだ。

ちなみにアメリカでは過保護・過干渉な親のことを「ヘリコプターペアレンツ」と言う。常時子供を監視している様子を上空でホバリングするヘリコプターに例えているらしい。

当時の子供たちは、モンスターやヘリコプターチックな親から一切の干渉を受けない独立した社会で、日々ハイリスク、ハイリターンの真剣勝負を繰り広げていたのだ。

群雄割拠!めんこファイターの集う場所

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俺が通っていた小学校の通学路と並行する幹線道路をしばらく歩くと、大きなバイパスと交差する。そのバイパスを潜った先に「北公園」という大きな公園があった。

北公園は、野球グラウンドが四面ほど取れるくらいの広さで、遊具もかなり充実していたので、近隣に住む子供たちがいつも大勢集まっていた。

そこで毎日のように行われていたのが、地元のトップファイターたちによる「めんこ頂上バトル」だ。

頂上バトルは、友達同士のお遊びという生ぬるいものではなく、めんこがめっぽう強い子供同士による真剣勝負である。隣町から遠征してきているファイターも少なくなかった。

さしずめドラゴンボールの天下一武道会といったところか。

俺は「いつかトップファイターになって頂上バトルに参戦したい!」という願望を抱きながら、毎日のように北公園へ通い、トップファイターたちに羨望の眼差しを向けていた。

高めよ!めんこ戦闘力

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めんこファイターには大きく分けて二つのタイプがいた。

定期的に駄菓子屋でめんこを仕入れる「スネ夫タイプ」と、実力で相手から奪ってめんこを増やす「カイジタイプ」だ。

当時、めんこは駄菓子屋などで1枚50円~100円前後で売られていた。

俺の小遣いは月にたったの300円で、スネ夫タイプを目指すにはいささか資金不足だったので、カイジタイプのめんこファイターになるしか選択肢はなかった。

 

しかし、カイジタイプには、相手から大量のめんこを奪うための高い戦闘力が不可欠だ。

めんこ戦闘力とは、あらゆる局面で最適なめんこをチョイスする判断力、めんこの最大風力を発揮させる技術力、そしてめんこを奪われても動じない強い精神力で構成されている。

俺は少ない手持ちのめんこを使って毎日必死に練習していたが、戦闘力が圧倒的に足りず、頂上バトルに参戦するなど夢のまた夢であった。

魔改造!アルティメットめんこルール

当時、北公園の頂上バトルで採用されていためんこのルールはかなり特殊なものだった。

なんと、「めんこに自由に手を加えても良い」とされていたのだ。

例えば、同じサイズのめんこを二枚重ねて、周りをビニールテープで張り付ける「張りめん(バリメン)」、重ねた二枚のめんこの間に砂を詰めて重量を増す「砂めん(スナメン)」、更に重量と攻撃力を増すために間に砂利を詰める「石めん(イシメン)」などが当たり前に使用されていた。

因みにこれらの発想は、当時大人気だった漫画「プラモ狂四郎」の影響をもろに受けている。所謂「魔改造(まかいぞう)」である。

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当然だが、そんじょそこらの素人が頂上バトルに参戦しても、あっという間に手持ちのめんこがすっからかんになるのが落ちである。

実際、無謀にも勝負を挑んで敗れ去り、半べそ状態でとぼとぼと帰っていく子供の姿を、俺は何度も目にしていた。

しかし、そんな光景を見せられても「どうしても頂上バトルに参戦したい」というモチベーションが尽きることはなかった。

なぜなら、ゲームウォッチで高得点を叩き出すより、人生ゲームで独り勝ちするより、断然めんこの方が熱いと思っていたからだ。

人生において、こんなに熱くなれるものなど他にはないと、その頃は信じていた。

ただ、もし仮に俺が頂上バトルに参戦できるだけのめんこ戦闘力を身に付けたとしても、手持ちのめんこが数枚しかない状態ではどうにもならないことも理解していた。

かといってめんこを買うお金も持っていない。

どうにかして手っ取り早く手持ちのめんこを増やすことはできないものかと毎日考え続けた・・・

そして、ある日突然閃いた。

「そうだ!買えないのなら、自分で作ってしまえばいいんだ!」

爆誕!空前絶後のUFOめんこ

当時、めんこと言えばアニメや特撮のキャラクターなどが印刷されたものが主流だったので、めんこを手作りしている子供などただのひとりも居なかった。

手作りのめんこなど恥ずかしくて使えないし、さすがにルール違反と考えるのが普通の子供の感性と言うものだろう。

しかし、北公園のルールはかなり特殊だったし、俺は少し変わった子だったので、とんでもなく良いアイデアを思い付いたとしか思っていなかった。

いつの世も、既成概念を打ち破る人間が時代に爪痕を残すものだ。

俺は家の中でめんこの素材になりそうなものを探した。重すぎず軽すぎない、丈夫でありながらしなやか、そしてなるべく手作りだとバレないもの。

小一時間、家中を引っ掻き回したがそれらしいものは見つからず、諦めかけたその時、台所でふと目に留まったもの・・・それは・・・

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日清焼きそばUFO

今と違って昔のUFOは、ペヤングソース焼きそばと同様にプラスチック製のふたが付いていて、その上に厚紙が乗っていた。その厚紙がめんこにピッタリだと閃いたのだ。

三十分後、サイズ、硬さ、重さ、全てが理想的なめんこが出来上がった。

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爆誕!UFOめんこ

それはあたかも、日清がUFOの販売促進用のノベルティグッズとして制作したかのような様相を呈していた。

(ちなみに当時はまだ、UFO仮面ヤキソバンはこの世に誕生していない)

作り方は簡単だ。蓋の上に乗っていた厚紙を2枚重ねて、周りを青いビニールテープで張り付けて固定した。所謂「張りめん(バリメン)」というやつだ。

本来、張りめんは、めんこの攻撃力と守備力を強化するための手法だったが、手作りめんこに応用するなど、当時は俺以外誰も思いつかなかったのだ。

覚醒!最強のめんこファイター

俺はUFOめんこの様子見のために、同じマンションに住むめんこ戦闘力の弱そうな子供とまずは手合わせをしてみることにした。

するとどうだろう・・・相手のめんこが面白いくらい簡単にひっくり返るではないか・・・

UFOめんこ、俺の体格、腕力、振り下ろすスピードなど全てがガッチリと噛み合っているのを感じた。

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「神がかる」というのはまさにこのことだろう。

結果、なんと開始から十分もしない内に、相手のめんこを二十枚以上も奪ってしまった。

更にUFOめんこは、チート級の攻撃力に加え、相手が巻き起こす風をサラッと受け流す、鉄壁の守備力も兼ね備えていた。

俺は確信する。

「このUFOめんこさえあれば、俺は間違いなく天下を取れる!」

世界を手中に収めるくらいの万能感が、俺の心を支配していた。そして、同時に人生において初めて感じる背徳感。

俺はなんと恐ろしいものを生みだしてしまったのだろう・・・

例えるなら、秋葉原の片隅に建つ雑居ビルの一室で、適当に研究していたら、うっかりタイムリープマシンを生みだしてしまうレベルである。(中二病乙)

「この圧倒的な力を試さない手はないよな・・・」

そして俺は、とうとう北公園の頂上ファイトに参戦することを決意した。

その晩・・・

「母さん!お願い!焼きそばもっとたくさん買ってきて!」

突然、無類のインスタント焼きそば愛好家に変貌した息子を、母は珍妙な面持ちで見つめていた。

参戦!めんこ頂上ファイト

次の日、俺は昨日奪い取っためんこをスーパーのレジ袋に入れ、緊張の面持ちで北公園へと向かった。

そこで待ち受けていたのは、北公園に集うめんこファイターの中でも最強と謡われる、めんこ御三家の一人「さとし(五年生)」だった。

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彼は「石めんのさとし」との異名をとっており、二枚のめんこの間に石(砂利)を詰め込んで重量を増す「石めん」の使い手だった。

石めんはとんでもない攻撃力と守備力を兼ね備えているため、使用する場合は最初に「石めんあり」を相手に承諾させなくてはならない。

その日、石めんのさとしは、年下の子供たちに石めんの使用を無理やり承諾させ、圧倒的な強さで独り勝ちしていた。

ニューヒーロー登場には、おあつらえ向きの状況である。

俺「俺も入れてくれ!お前たちのかたきは俺が取ってやる!」

さとし「見ない顔だな。石めんありだぞ。いいんだな?」

俺は石めんの使用を承諾し、人生初の頂上ファイトの火蓋は切って落とされた。

対決!めんこ御三家「石めんのさとし」

いざ、勝負!!

俺の振り上げた手の先にあるUFOめんこが風をまとう。

そして、電光石火の第一投が放たれた。

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「UFOスマーーッシュ!!」

次の瞬間、石めんがフワッと空中高く舞い上がり、糸で操られたかのようにクルっと回転して地面に落ちた。

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石めんのさとしが、楳図かずおの漫画ばりの驚愕の表情を浮かべた瞬間を、俺は今でも忘れない。

観戦している子供たちも皆、何が起きたのかわからないという表情だった。

我に返ったさとしは、苦し紛れにこう言い放った。

さとし「そのめんこ!きたねぇぞ!」(ずるいの意味)

めんこに石詰めてるやつが何を言いやがる!(心の声)

その後も、さとしが出すめんこを一撃で仕留め続けた。

UFOめんこは刃牙の父、範馬勇次郎並みに無敵だった。

俺は、完全なワンサイドゲームで石めんのさとしを木端微塵に撃破した。これぞ正に下剋上である。

手持ちのめんこを全て失ったさとしは、ブツブツと文句を言いながら公園を去っていった。

俺は、近くのスーパーで小さなダンボールをゲットし、大量に奪い取っためんこを詰め込み、意気揚々と自宅マンションへ凱旋帰宅した。

不思議!欲望の正体とは

仕事から帰った母が、玄関に無造作に置かれたダンボールを見て、俺に尋ねた。

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母「あれ、どうしたの?」

俺「めんこ、勝ったから・・・」

母「そんなにお金持ってないでしょ?」

俺「ちがうよ!買ったんじゃなくて、勝ったんだよ! 相手から取ったの!」

母「あらそう、すごいねぇ! でも相手の子に返してあげないの?」

俺「うん。めんこはそういう決まりだから。」

母「へぇ、そうなんだ・・・」

母はそれ以上何も言わなかった。当時の親は、子供には子供の世界のルールが存在し、時にそれを尊重すべきなのを良くわきまえていたからだ。

その夜、ベッドの上で一日の出来事を振り返っていると、ひとつ心に引っ掛かることがあった。

あんなに欲しかったガンダムや仮面ライダーのめんこが手元にたくさんあるのに、ダンボールを玄関に放置するほど、これっぽっちも執着しなかったのが、自分でも不思議だったのだ。

本来ならば、ダンボールからめんこを取り出して、一枚一枚を愛でてもおかしくはなかった。

人の欲望とは不思議だ。持ってない内は欲しいと願うが、いざ手に入れたとたんにその価値は下がり、興味が薄れてしまう。

きっとお金や名声もそうだ。

だから、目の前にある些細な幸せにもっと目を向けるべきなのだろうと思う。

例えば、配偶者にいつもありがとうと感謝の気持ちを伝えるとか・・・(俺は力いっぱい独身だが)

もしかしたら、チートデイズは人間の欲望の正体を学ばせるために、神が子供に与えた試練なのかもしれない。

激突!めんこ御三家「張りめんのゆうじ」

次の日に北公園に現れたのは、めんこ御三家の一人「張りめんのゆうじ」だ。

何を隠そう、彼が「張りめん」などの魔改造の概念を最初に頂上バトルに持ち込んだ張本人だった。

少ない小遣いで買った貴重なめんこを、二枚重ねにしてビニールテープで張り付けるという発想は、小学生にはなかなか贅沢な思い付きだと思うが、それには理由があった。

ゆうじは典型的な「スネ夫タイプ」のファイターだったからだ。

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しかも、ゆうじは俺が呪い殺したいくらい忌み嫌っていた「ATMペアレンツ」の子供だった。

子供「ねぇ、お母さん、めんこ買うから500円ちょうだい。」

母「はいどうぞ。無駄遣いしちゃだめよ。」

無駄遣いの定義とはいったい・・・

つまり、ATMペアレンツとは、お金が欲しい時に、無条件でお小遣いをくれる親のことだ。

こういう親の元に育った子供というのは、大人になってからも物欲を抑えられず、希少価値の高い物に目移りする傾向があるように思う。

とにもかくにも、彼の作る「張りめん」は贅沢の極みと言って良かった。

後にそれを証明する事件が起こる。

事件発生!ゆうじの張りめんの秘密

あるファイターが、手持ちのめんこを増やすために、ゆうじから奪った張りめんのビニールテープを剥がして二枚にバラした時、事件は起きた。

彼は、二枚目に重ねられていためんこの絵柄を見るなり、顔を歪めながら大声で叫んだのだ。

「えぇぇぇえーーー!マジかよぉ!!ふざけんなよ!!」

その絵柄とは・・・

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まさかのガンタンク!

※機動戦士ガンダム公式Webより

通常、張りめんの二枚目に使うのは、まったく人気のないキャラクターのめんこにするのがセオリーだった。

つまり彼にとって、ガンタンクはその程度の価値しかなかったことになる。

あの時、その場にいた全員が心の中でこう叫んだのは言うまでもない。

「ガンタンクなめんじゃねぇぞ!」

これが、後に伝説として語り継がれる「ゆうじガンタンク事件」である。

そして、前日に続き、俺は完全なるワンサイドゲームで、ゆうじを完膚なきまでに叩きのめしたのだった。

その日、俺は増えすぎためんこを自宅マンションのエレベーターホールに並べ、同じマンションに住む年下の子供たちを呼び出してこう言った。

「これ全部、好き勝手に持っていって良いよ。」

目をキラキラと輝かして、一心不乱にめんこを取り合う子供たち。

俺は満面の笑みを浮かべ、まるでウイスキーを舌の上で転がすようにして、コカ・コーラをチビチビと飲みながら、いつまでもその光景を眺めていた。

最終決戦?!めんこ御三家「通しのたくま」

次の日も、俺は北公園へ繰り出した。

その日は、めんこ御三家が一堂に会して、俺の登場を待っていたようだった。

めんこ御三家、最後の一人「通しのたくま」は、俺が一番憧れていた実力派のめんこファイターだ。

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頂上バトルの特殊ルールには、相手のめんこを裏返すと勝ちという一般的な「起こし」ルールの他に、「通し」というルールが存在した。

「通し」とは、相手のめんこの真下を通過すれば勝ちというルールである。

たくまは、その異名の通り「通し」の達人だった。

通常は、めんこをほぼ垂直にたたきつけるのだが、彼はまるで野球の投手のアンダースローのように、低い姿勢から独特のフォームで腕を振る。

すると真横に風が巻き起こり、めんこが地面スレスレを一直線にスライドしていくのだ。俺たちはそれを「イーグルスロー」と呼んでいた。

元ネタはもちろん、キャプテン翼の登場人物、松山くんの必殺シュート「イーグルショット」である。

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通しのたくま「さとしとゆうじを倒したのはおまえか?」

俺「そうだよ。たくまくんとも戦いたい。」

通しのたくま「構わないが、お前のUFOめんこ、今日から使うのは禁止だぞ!」

俺「えっ?!なんで?!なんで?!」

通しのたくま「お前、そのめんこ自分で作ったよな。そんなの反則に決まってんだろ。」

石めんのさとし「どうりでおかしいと思ったんだよな。普通に考えて手作りはダメだろ。」

張りめんのゆうじ「そうだそうだ!買っためんこじゃないと不公平だぞ!」

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UFOめんこ禁止令発動!

石や砂を詰めるのは良くて、手作りがダメというのがどうしても納得いかなかったが、ぽっと出の新人に発言権などあるはずもなかった。

突然、頼みの綱であるUFOめんこが使えなくなり、ただの凡人と化した俺は、瞬く間に手持ちめんこをすべて失った。

手元に残ったのは、使用を禁止されたUFOめんこ、ただ一枚。

半べそをかきながら自宅マンションへと帰った俺は、UFOめんこを切り刻んでゴミ箱に捨てた。

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こうして俺のチートデイズは、たった三日間で幕を下ろしたのだった。

しかし、世界を自分の意のままに操っているかのような万能感、きっとあの感覚は一生忘れないだろう。

チートデイズ、それは幼い頃の愛おしく、そして掛け替えのない思い出だ・・・