あの頃、誰にも見せられなかったゲーム
スーパーファミコンが発売され、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』『ファイナルファンタジーIV』といった名作が次々と世に放たれ、日本中の子供たちが熱狂していた時代。
すっかり主役の座を奪われてしまったファミコンで、ひっそりと画期的なソフトが発売されました。 その名も「絵描衛門(デザエモン)」。
なんと、オリジナルの縦スクロールシューティングを自作できてしまうという、なんともマニアックなソフトでした。驚くべきことに、フォント以外のグラフィックやBGMまで、すべて自分で作ることができたのです。後にスーパーファミコン、プレイステーション、セガサターン、NINTENDO 64でも発売されています。
ゲームデザイナーになるのが夢だった私は、これに飛びつきました。
特に夢中になったのが作曲です。五線譜に音符を置いていくのですが、私は楽譜が読めません。実は10年間もヴァイオリンを習っていたのですが、基本的に耳コピで、結局楽譜は読めないまま辞めてしまいました。
しかし、音符を置いては再生し、また置いては再生する…その永遠とも思える繰り返しが、楽しくて仕方がありませんでした。 (あの時作った曲を保存しておけばよかったと、今でも本気で後悔しています。当時はラジカセで録音するくらいしか方法がありませんでしたから…)
そして、ついに完成したシューティングゲーム。しかし、周りの友人たちの興味は、とっくにスーパーファミコンに移っていました。私が作った、たどたどしいファミコンのゲームなど、誰も見向きもしてくれません。
結局、私の処女作は、誰にもプレイされることなく、静かに歴史の闇に消えていきました。
30年の時を経て、今こそリベンジを
今はインターネットがあります。スマホやPCがあれば、私の作ったゲームを世界中の誰かに、すぐに遊んでもらえる環境があります。
そうだ、あの時の雪辱を果たそう。 30年間、心の奥底でくすぶり続けていた想いを、今こそ形にしよう。
そうして、私の30年越しのリベンジが始まりました。
AIと共に歩んだ開発の道のり
とはいえ、私にプログラミングの知識はありません。30年前と何も変わっていないのです。そこで白羽の矢を立てたのが、現代の魔法「AI」でした。
AIは、私にとって現代の「デザエモン」です。専門知識がなくても、アイデアと情熱さえあれば、誰もがクリエイターになれる。その可能性を、この手で証明したかったのです。
【閑話休題】なぜ、今AIなのか
少しだけ、昔話をさせてください。
私は近頃、若い人に「これからはAIを使いこなせないとビジネスで生き残れない」と伝えることが多いのですが、あまりピンと来ていないようなのです。その様子を見るたびに、過去の記憶が蘇ります。
社会人1年目の頃、パソコンが使えず、報告書を手書きで提出することに固執したベテラン社員がいました。彼は上司から「ポンコツ社員」扱いされ、降格の末に会社を去っていきました。 また、家電量販店で働いていた頃、商品の魅力を伝えるポップは専門の担当者が手書きするのが当たり前でした。しかし、PCとプリンターを連動させた「ポップマシーン」が導入されると、その担当者の仕事はなくなってしまい、会社を去っていきました。
若い世代は、流行を追い、時代に適応するのは得意かもしれません。しかし、それが「仕事」という領域になった途端、新しい技術を学び、積極的に活用しようとするのは、ごく一部の優秀な人だけなのかもしれません。
提案書、売上分析、競合調査、議事録、タスク管理…今やAIは、あらゆるビジネスシーンでその威力を発揮しています。特に「AIエージェント」と呼ばれる技術は、使いこなす者とそうでない者の間に、圧倒的な時間軸の差を生み出します。これまで個人の能力差でしかなかったものが、今、とんでもない格差に繋がろうとしている。その事実に、まだ多くの人が気づいていません。
もちろん、AIがコモディティ化すれば、誰もがその恩恵を手軽に受けられるようになるでしょう。しかし、複数のAIを高度に使い分ける「専門家」との差は、むしろ開いていくはずです。その格差は、恐ろしいほどに広がり続けるでしょう。
再び、開発の話へ
さて、話を戻しましょう。 現代の「デザエモン」であるAIとのゲーム開発ですが、その道は想像以上に険しいものでした。
最初に使ったのはClaude。非常にコーディング能力が高く、見た目を整えるのが得意です。しかし、チャットで扱える情報量に限りがあり、会話を続けるうちに齟齬が生まれたり、コードを勝手に改変したりする問題に直面しました。
次に試したのはGemini。普段は文章作成で使っていますが、コーディング力も確かです。しかし、突然理解力が著しく低下する「バブバブモード」に入ると、使い物にならなくなります。コードが複雑化するにつれ、その管理・制御が困難であるという弱点は共通でした。
そこで導入したのがCursor。AIを統合した次世代コードエディタで、バージョン管理がしやすく、開発効率は劇的に向上しました。しかし、これもまた、複雑な修正を力業で解決しようとしてバグを量産し、一度ハマると同じ失敗を繰り返す「ドツボモード」に陥ることがありました。
最終的に私が辿り着いたのは、Claude、Gemini、ChatGPT、Cursorを同時に起動し、それぞれの得意なことをさせ、弱点を補い合わせるという使い方でした。これにより、開発はようやく軌道に乗ったのです。
そして、約5日間の開発期間を経て完成したのが、この「NEXT MOVE STRIKER」です。
自分でプログラムをコーディングできないため、断念した要素がいくつもあります。たとえば、1UPアイテム、敵キャラクターの複雑な挙動やアニメーション、多彩で美しい背景などです。しかし、あまり凝りすぎると膨大な時間を費やしてしまうので、ひとまず開発はここまでに区切ろうと思います。
ちなみに、ゲーム内で使われている画像は一部はフリー素材ですが、それ以外はChatGPTで生成し、効果音はWEBベースのジェネレーターとオーディオエディタを使って作っています。BGMは全てSunoで作曲したオリジナルです。
ゲーム概要:「NEXT MOVE STRIKER」とは?
「NEXT MOVE STRIKER」は、AIとの共同作業で作り上げた、全3ステージ構成の縦スクロールシューティングゲームです。
- 多彩なパワーアップ: アイテムを取得して自機を強化!最大レベルではレーザーも…?
- 巨大ボスとの激戦: 各ステージの最後には、巨大なボスが待ち受けます。激しい弾幕をくぐり抜け、撃破を目指してください。
- オリジナルBGM: ゲームを彩るBGMは、AI作曲サービス「Suno」で制作した完全オリジナルです。ステージやボス戦の雰囲気に合わせて変化するサウンドをお楽しみください。
- PC・スマホ両対応: PCのキーボード操作はもちろん、スマートフォンのタッチ操作にも対応しています。
操作方法
【PCでの操作】
- 移動: 矢印キー
- ショット: スペースキー
- ボム: Bキー
- ポーズ: Pキー
- ゲーム開始: Sキー
【スマートフォンでの操作】
- ゲーム開始: 画面を3回連続でタップ
- 移動: 画面左下のバーチャルスティック
- ショット: 画面右下の「🔥」ボタン(オートショット)
- ボム: 「🔥」ボタンの左にある「💣」ボタン
- ポーズ/再開: 画面右上の「⏸️」「▶️」ボタン
- ゲームオーバー/クリア後: 画面タップでタイトルへ
配布について
本作は、PCで遊べるブラウザ版と、Androidアプリ版の2種類をご用意しました。どちらも無料でプレイできます。
アプリ化も、ChatGPTに手順を一つ一つ教わりながら実現しました。専門知識がなくても、AIの助けがあればここまでできるという証です。 (※残念ながらiOS版は、Appleの制約が厳しく、今回は断念しました。)
最後に
このゲームは、私のブログ知識、HTMLの基礎知識、プロンプトエンジニアリング、そしてPCスキルといった、持てるもの全てをAIと絡み合わせて作り上げた、30年越しの夢の結晶です。
この挑戦が、AIの可能性と、何かを創り出すことの楽しさを伝えるキッカケになれば幸いです。 ぜひ、遊んでみてください!